インドネシア・ロンボク島で節分を紹介したら、トンデモ節分が出現した話

(2022年2月3日)

先日、高校の日本語の授業でカレンダーの読み方を教えた。

その翌週、ちょうど旧正月・節分とイベントが続いたので、カレンダーの読み方を復習しながら日本の節分について紹介することにした。

家でごそごそと準備する。そもそも「節分」とはどういう日なのか、から説明しないといけない。

「節分って立春の前日でしょ」と頭の中で私がいう。「うん、それはそう。じゃあ立春って何?どうやって決めてるん?」もうひとりの私にツッコまれた。ううう。わからなひ。

立春を検索すると大きく分けて次の2つの説明があった。

・一年を二四の節気に分けた年初の節気
・二十四節気を定めている定気法で、太陽黄経が315度の時 

難しくて、とてもインドネシア語で伝えられそうにない。こりゃダメだと諦めたかったが、生徒に教える手前、できないままでは困る。

ああだこうだと意地になって調べまくり、以下のように簡単にまとめた。

・旧正月・中国正月・春節…古代中国の月の動きをもとにしたカレンダーの新年
・立春… 古代中国の太陽の動きをもとにしたカレンダーの新年

私は準備ノートの前で「おおお、すごーい」とのけぞった。月と太陽なんや!

ほかにもなぜ豆をまくのかなど生徒に質問されそうな部分はあらかじめ調べた。大変勉強になった。が、この地点でもう4時間も準備に費やしたのに、たった数分で説明がついてしまいそうだ。少し寂しい。

せっかくだから Twitter でつぶやきたい!だけど…もしかして、これって日本人の常識なんだろうか。毎年豆をまいて柊鰯を玄関におき恵方巻を食べる人々は、様々な由来などを知っているんだろうか。私、知らんかったよ(小声)。

「いい大人なのにアホだと思われたらどうしよう~~~」

私は無駄な自意識を発動させ、Twitterには書き込まなかった。

いざ当日。授業準備だけですでにエネルギーが消滅しかけていたが、おはようと元気に授業を始めた。「日本では、明日は『節分』の日です」「節分ってなんですかー?」「うん、今から説明するね」。

私は「よーし、準備した成果を発揮するぞ!」と息巻いた。「こんだけ準備したんだからお前らよく聞けよ」と謎のオーラが私から放出されていたのか、生徒たちはいつもよりよく話を聞いてくれた。

ところが、肝心の反応はというと、私が準備に燃え尽きて適当な説明に留めた部分が一番盛り上がった。

私は、鰯や柊をそれぞれ「魚」「とげのある葉っぱ」と大雑把に訳し、鬼は「鬼滅の刃」でイブリス(iblis)と翻訳されていたものをそのまま使用したのだ。

「何の魚?」
「大きさは?」
「え?臭くて鬼が逃げる?じゃあトンコルかな?」
(トンコルは南洋に生息するカツオのような魚)。

「葉っぱはサボテン?」
「ドラゴンフルーツじゃない?」
「パンダン?」
「おじぎ草?」

「鬼って、鬼滅の刃のどの鬼ですか?」
「猗窩座⁉」
「禰豆子ちゃーん」

ドラゴンフルーツじゃないし、猗窩座でもないから!
えーん、節分がトロピカルなコスプレイベントになってる~。

違うよ~と訂正しながら、私は思った。

そっか、隙が重要なんだ。

適当に説明したほうが盛り上がったのは、素材が面白かったのもあるが、適当さが隙となって「これは何?」「どうなってるの?」と生徒からの質問を促したからではないか。

一から十まで私が教えるより、「ここは先生も知らないからみんなで調べてみようか」とやったほうが楽しく自主的に学べるかもしれない。

このあと、鰯も柊も節分の鬼も生徒たちにスマホで検索してもらったら、ササッ語でワイワイ盛り上がっていた。

大人が鬼のふりをして災いを除き幸福を呼び込むように、これからの先生は「いい大人なのにアホ」のふりして学びを手繰り寄せるのがいいのかもね。

(みどり @hijau39)


追伸:鬼滅の刃公式の節分イラストがほんとにかわいかったので見て~。

私は義勇推しです!

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