今日はマウリッド。
イスラム教の預言者ムハンマドの誕生日だ。
この日は、ロンボク島では、ナシラスルという特別なおこわを作る。
年に一度しか作らない料理だ。
私は昨晩、このナシラスルをはじめて作った。
そして、失敗した。
私が見つけたレシピによると、こういうできあがりになるはずだった。
そして、実際にできあがったのは、これ。
なんでや。全然ごはんの色が違う。
私は、炊飯器を開けて出来上がりを見た瞬間、すごく不機嫌になった。
あ~ぁ、年に一度の祝祭日の家族の楽しみが…。
家族、なかでも夫が喜んでくれるだろうと思って作ったのに。
*
なぜ失敗したか。
単純に、私はレシピを読み間違えていた。
では、そもそもなんで読み間違いが起こったのか。
それは私が料理に集中していなかったからだ。
実は、ナシラスルを作る前に、夫と仕事のことで喧嘩をした。
頼んでいたことを夫が二日も怠っていたことが原因だ。
「そんないい加減な気持ちでしか仕事できないのなら、やめてしまえ」
夫へのイライラを食材に八つ当たりしながらナシラスルを作った。
途中でこんな精神状態で作ってもアカンと思い直した。
落ち着け落ち着けと唱えながら作った。
頑張って軌道修正したのに…。
あぁ、もうヤだぁぁぁぁ。
*
「黄色くない~」と半泣きでいたら、すでにゆったり寛いでいた夫が炊飯器のところまで見に来て、「黄色いよ」と言った。
たしかに薄暗いので、実物はより黄色く見えるかもしれない。
…いや~、ないな~。
残念だけど、誓って黄色くない。
「黄色くないっ!」
そんなことで私の機嫌がなおると思うなよ!という気持ちもあり、私は夫の優しさを跳ねのけた。
あ~最悪や~と思いながら寝床へ入った。
夜遅くて疲れているし、イライラする…。
早く寝よう。
今朝。
起きてすぐに炊飯器のなかをチェック。
やっぱり黄色くない。淡いオレンジ色だ。
あのハッと目の覚めるような黄色がいいのに。
でも、食べたら味はおいしかった。
私は一連のことを振り返った。
昨日は疲れていた。
それに加え、喧嘩で乱れた心を料理中も料理後も引きずっていた。
だから読み間違いもしたし、夫の優しさも撥ねつけたのだ。
このままいったら、今日も小さなほころびが出そうだ。
私はゆっくり考えた。
たしかに夫は頼んだことをしなかった。
でも、私も彼の言い分を何も聞いていなかった。
彼にも何か言い分があるのかもしれない。
うーむ、夫に喧嘩のこと、謝っておこう。
夫を起こしにいき、謝った。
「昨日、怒ってごめんね」
夫は、いいよと許してくれた。
*
それだけで、ナシラスルのことはどうでもよくなった。
不思議だ。
いや、不思議じゃないんだけどさ。
自分の乱心がおさまったんだもの。
ナシラスルの色が違うことごときで騒がなくていい。
はぁ、情けない。
でも、謝ったからわたしにしちゃあ上出来かな。
来年は、八つ当たりしないでもっとおいしいナシラスルを作れますように。
(Midori Rahma Safitri)
※この記事は、noteに 2019年11月9日初出したものです(noteアカウント不調のため移動)
コメント